4 北欧に学ぶ環境配慮~グリーンMICEを考える

北欧に学ぶ環境配慮~グリーンMICEを考える

第4回目は、「北欧に学ぶ環境配慮~グリーンMICEを考える」と題してスカンジナビア政府観光局の伊藤正侑子氏と北欧の環境配慮を視察してきた森影依氏による講演でした。

日時:
2010年10月28日(木)18:00〜20:30

講師:
伊藤正侑子
(スカンジナビア政府観光局 アジア太平洋地区統括本部代表代理)

COP15 in デンマーク

スカンジナビアは、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの3カ国で、スカンジナビア政府観光局は、この3カ国のツーリストプロモーションをメインにやっています。

COP15気候変動枠組み条約会議は、2009年12月に12日間デンマークで開催されました。すべての締結国が参加し、温暖化ガスの排出量の8割を占める途上国が参加したことが意味のある会議だと言われています。

この会議がデンマークで行われたことは、デンマークにとって意味のある形になりました。

COP15には192カ国の要人、126人の各国首脳、そして6000人のNPO、NGO、6000人のメディアが集まりました。そして2500の公式会議が開かれ、300のプレスカンファレンスと200のサイドEventおよび220の展示会も併せて行われました。

デンマークの首都はコペンハーゲンで立憲君主制と議会制民主主義をとった王国で、面積は九州とほぼ同じ、人口は北海道とほとんど同じです。農業王国で自給自足の国で、国民生活に必要なエネルギーも自国の分を遙かに超える量を生産しています。資源がない国ですが、自立した国だといえます。

2025年までにカーボンニュートラルの実現を宣言

デンマークがCOP15 の開催国に選ばれたのには理由があります。デンマークはエコフレンドシティということでイメージ作りを行ってきました。高いレベルのエコシティになるために税金が投入され、政策が行われてきました。

コペンハーゲンは、2025年までカーボンニュートラルを実現すると宣言しています。エコな都市として他の国を牽引する役割を担うのではないかと言うことでCOP15の開催地に選ばれました。デンマークのような小国でも再生可能エネルギーとその利用技術によって大国に劣らない模範となれるようなCOPを開催できるということを各国に示したいと、大国をプッシュする意味もありました。

デンマークは2006年のGOAL & Visionで2025年にコペンハーゲンをカーボンニュートラル都市にする目標、2050年には化石燃料に頼らないエネルギー自立国になるという目標を立てて、COP15は、その取り組みの足がかりとして位置づけられました。 すでにこの目標に向けて様々な計画が動き始めています。

COP15の環境配慮

COP15では、持続可能な活動とともに革新的・、技術的な要求を満たすためにAPEXというモデルが使用されました。環境に配慮したEventを行うためのツールです。

Distinationでは、コージェネレーションシステムによるCO2排出量を3分の1に落とすことができ、2025年までにカーボンニュートラル都市宣言をしていたことが、重要だったといえます。続いてAccommodationでは、コペンハーゲンではエコホテルとしてGreen Keyという環境認証があり、2009年の段階で客室の53%がこの認証を受けています。Food /Beverage & Waste Managementにおいても75%が地元産、そのうち40%がオーガニックの認証を受けています。COP15では水も地下水のスタンドを設置し、トウモロコシで作った有機プラスチックカップを使用しました。COPの会場となったBella Centerや100の地元レストランでは、期間中安全で体にも地球にも優しい食事キャンペーンも行いました。Bella Centerは設計の段階から廃棄物管理システムを組み込まれ、COPで排出されたゴミは、紙やプラスティックを再々利用、再利用できるゴミと、有機ゴミに分別され、食物ゴミはバイオガスをとるために利用され、地域暖房の燃料として使われています。

Transportationでは、会場のBella Centerまで93%の参加者が公共交通機関を利用しました。また、外務省は200以上のバイオディーゼル車や水素自動車を用意して要人に対応しました。また、大学生グループがハイブリッドバイクといった環境配慮型の電気自転車を開発して200台をBella Centerに設置しました。この自転車は現在販売され、学生の発想がエコビジネスにつながりました。

会場となったBella Centerは現在ヨーロッパ最大の会議センターといわれています。あらゆるMICEに対応できるフレキシブルな設計で、会議室はブロードバンドインターネットアクセスとワイヤレスネットワーク機能を備えています。この会議場は世界で初めてGreen Keyの認証も取得。会場周辺の緑化と植樹を通してCO2排出量を19.3%削減しました。現在も環境配慮に向けた努力を続けています。

Exhibitsでは220以上の展示会が開催されましたが、その中の一つがホーペンハーゲン市という仮想都市を設定して世界の70の都市の市長に参加してもらい、希望というメッセージを集められ、展示されました。

ITと映像では、コペンハーゲンのホームページでCOP15のライブ映像を見ることができました。また仮想会議室を設けて世界75地域で電話会議ができるようになっており、24時間稼働して様々なカンファレンスが行われました。参加するジャーナリストのためにコンピュータワークステーションが用意され、インターネットアクセススピードやITインフラも十分に配慮されました。  すべての照明はLEDが使われ、エネルギー消費量を30%以上削減することができました。

マーケティングとコミュニケーションでは、持続可能性の専門家のボランティアを配置し、実際の議論を活性化させていくコミュニケーションツールも用意しました。

記念品は用意しないというポリシーを徹底させ、参加者にはこのポリシーが書かれた紙を用意して、記念品のためのお金は外国人留学生11人の奨学金に使いました。社会貢献事業に役立てるという取り組みです。また紙やパンフレットはFSCの認証を得ている不材を使用しました。

教育現場では、コペンハーゲンの400の小学校の子供たちが植樹を行い、約2000本の木を植えました。COP15というイベントを通じて、学校教育の現場でもCOP15の意味と効果を子供たちに教える機会が設けられています。

Key Insightsの10の目標

COP15ではKey Insightsとして10の目標をたてています。1つはネットワークでチームを作っていこうという提案です。できたチームは地域に対して環境貢献をしていくことになりました。2つ目はサプライヤーの受発注です。一部の利益にならないように、全体の利益になるような受発注を考えることが重要だと言っています。

3つ目は合意を形成し、ゴールを決め、情報を共有して話し合おうということです。次に外部の第三者認証をとることです。外部の理解と民間や一般の人の信頼性のあるイベントすることができます。それからAnticipate。スタッフに対してどんなところに配慮しているかという教育をすることで、スタッフの意識が高まりました。そしてみんなのわかりやすいキャッチフレーズを作り共有すること。  廃棄物処理のシステムはイベント当初から考え、ゴミのマネジメントをすること。紙をどう減らすかも考えなければなりません。最後は、案ずるより産むが易しで、とにかくやってみよう、ということです。

COP15からGreen MICEの提案

COP15が終わった後に、自分たちがやったことをちゃんと評価し、データを蓄積して何が失敗だったか、何が成功したか、次のCOPの人たちに提案しています。未来に責任をもっていくために、BS8901で次のCOPをやりましょうと提案し、しっかり計画を立てることとイベントのデザイン(構想)が非常に重要だと提言しています。そして本当のゴール、最終目標はその地域や国が良い方に進むことであると認識することです。そして最後に自治体は経済の活性化とともに、健康で環境に配慮された生活をつくるための政策を行うことが重要です。

街はいろんな人たちが健康で幸せに暮らせる場です。そんな中でMICEがどんないい影響を与えることができるのか。持続可能な未来を想定したMICEは、多くの関係者を巻き込むことで環境負荷を減らし持続可能な未来へ導くことができるツールです。ゴールはMICEを成功させるのではなく、MICEを使ってその地域がどれだけすばらしい都市になれるかということで設定する必要があるとデンマークでのCOP15は提案しています。
 一番重要なのは、みんなが幸せに暮らせることが最終目標です。その目標に向かって、どうやって協力していくかCOP15 の重要な位置づけだと考えています。